ボールの飛行コースは、クラブフェースの向きとクラブヘッドの移動方向で、
決まります。ボールの飛び出し方向は、フェースの法線方向に近くなります。

ドライバーでスライスの直し方 あおば屋

飛球の方向を決める衝突理論 

衝突理論

スライスやフックなどのボールの飛び方・転がり方は、クラブヘッドとボールとの衝突条件で決まります。


インパクトの瞬間、クラブフェースとゴルフのボールは約0.0005秒間接触しています。この間に、以下のことが起こります。

・クラブヘッドの運動方向に関して、系の運動量は保存します。

・クラブフェースとボールは、フェースの法線方向に関して、非弾性衝突します。

・ボールは直径の4分の1まで潰れますが、フェースから離れる時には、元に戻ります。

・フェース表面でボールは初め滑りますが、摩擦で回転し、最後は滑らず転がります。


この衝突を物理学の力学で解くと、ボールの初期飛び出し方向とボールの初期回転角速度は、以下の因子で決まります。

・クラブフェースの法線方向(赤矢印)

・クラブヘッドの運動方向(青矢印)

・クラブヘッドとボールの質量比(a=m/M)

・クラブフェースに対するボールの反発係数(e=-V2/V1)

・ボールの潰れによる、ボールスピンの角加速度の減少率(f:推定値)


二次元での衝突(水平面)

初めに、クラブヘッドとボールの三次元の衝突を単純化して、水平面の二次元成分だけ考えます。

下の図1は水平面で、ゴルフボールを円で、クラブヘッドを長方形で示します。長方形の一辺はゴルフボールが衝突するクラブフェースです。右利きのゴルファーが、図の左側に立ち、図の上方向が目標方向です。


図1 スライスする時のクラブヘッドとボールの衝突
図1 クラブヘッドとゴルフボールの衝突(水平面)

クラブヘッドは、水平面上を青点線に沿って直線運動して、静止しているボールに衝突します。


図1に示した青矢印赤矢印を説明します。

青矢印:「クラブヘッドの運動方向」

インパクト時のクラブヘッドの運動方向です。アウトサイド・インなら青矢印は図1の様に目標より左向きに、インサイド・アウトなら青矢印は目標より右向きになります。

(手打ちスイングで、ドライバーを振る時に力が入りすぎると、アウトサイド・インになりやすくなります。また、右にスライスする球筋を修正するため左方向に打つ時も、青矢印は目標の左を向きます。)

赤矢印:「フェースの法線方向」

フェースと垂直な方向で、インパクト時のフェースの向きを示します。フェースが開いていれば赤矢印は右向き、フェースが閉じていれば赤矢印は左向きになります。

(手打ちスイングで、クラブフェースの制御動作(手を返す動作)のタイミングが遅れると、赤矢印は目標の右を向き、進み過ぎると左を向きます。)


図1は、青矢印が左向き(アウトサイド・インのスイング)、赤矢印が右向き(フェースが開いた状態)になっています。

両者の向きが目標方向と違い過ぎる様に見えるかも知れませんが、実際のスライスでは、もっと違っていることもあります。


ボールの飛び出し方向

この条件で、実際の数値と推定値(f)を用いて計算を行うと、クラブヘッドが衝突したゴルフボールの初期飛び出し方向は、図2に示す黒点線矢印の方向になります。

スピンでカーブがかかる前のゴルフのボールの運動方向です。黒点線矢印は、青矢印赤矢印の間で、赤矢印に近い向きになります。

図2 スライスする時のボールの初期飛び出し方向
図2 ボールの初期飛び出し方向

黒点線矢印のおよその向きは、次の比で表せます。

[青矢印黒点線矢印間の角度]:[黒点線矢印赤矢印間の角度]
  = [80~90]:[20~10]


ボールの回転と軌跡

インパクト時に、初めボールはクラブフェース上を滑っていますが、摩擦の作用でフェース上で回転を始め、フェースを離れる前には滑らずに図3に示す方向に転がっています。(フェースとボールが乾燥時。)

そして、フェースを離れる瞬間に、ボールの初期回転角速度は、衝突前のクラブヘッド速度と、青矢印赤矢印のなす角の正弦(sin)に比例します。


回転しているボールは、飛行中に空気との相互作用によって、右カーブして赤矢印の向きを越え、更に右に飛んで行きます。そのボールの軌跡は、図3に示す黒矢印になります。

黒矢印:「ボールの軌跡」

インパクト直後は黒点線矢印に沿ってボールは運動し、その後、ボールはボールの回転でカーブしていきます。そのカーブして飛んでいくボールの軌跡の概略を黒矢印の形で示します。衝突前のクラブヘッド速度が速い程、また、青矢印赤矢印の向きの違いが大きい程、ボールの初期回転角速度が大きくなり、大きくカーブします。


図3 ボールの軌跡
図3 ボールの軌跡

図3の黒矢印(ボールの軌跡)は、スライスそのものです。

スライスになる条件

図3において、赤矢印の向きはそのままで、青矢印(クラブヘッドの運動方向)の向きを変化させてみます。


青矢印が目標の左側を向いている。

図4 青矢印が目標の左側向き
図4 青矢印が目標より左向き

図4のクラブヘッドの移動方向は、アウトサイド・インで、図3と同じです。ボールは右に飛び出し、著しく右カーブします。最悪のスライスです。


青矢印が目標と向きが同じ。

図5 青矢印が目標と同方向
図5 青矢印が目標と同方向

図5のクラブヘッドは、目標に向かって真っ直ぐ動きますが、ボールは右に飛び出し、右カーブします。クラブは真っ直ぐ目標方向にスイング出来ているのに、明らかにスライスです。


青矢印が目標の右側を向いている。

図6 青矢印が目標の右側向き
図6 青矢印が目標より右向き

図6のクラブヘッドの移動方向は、インサイド・アウトです。赤矢印青矢印の更に右側を向いていて、ボールは右に飛び出し、少し右カーブします。青矢印赤矢印の向きの違いが小さいため、右カーブはあまりしませんが、初めから右に向かって飛ぶスライスです。


以上から、インパクト時にフェースが開いている(赤矢印が右側を向いている)限り、クラブヘッドの運動方向(青矢印の向き)が多少変わっても、ゴルフボールは右に飛んで、スライスになる事が判ります。

尚、スライス対策のために、次章の「誤った飛球法則」に従い、アウトサイド・インで左に打とうとすればする程、図4の様に右曲がりのカーブがきつくなり、スライスは尚更悪化します。

「誤った飛球法則」に注意

物理法則を無視した「誤った飛球法則」が、アメリカのゴルフ界で常識として幅をきかせていました。それが日本に伝わり、「誤った飛球法則」で指導しているレッスンプロも未だにいます。この「誤った飛球法則」に従うと、スライスは悪化します。


この「誤った飛球法則」の感覚的な主張は、

「ゴルフボールの初期飛び出し方向(黒点線矢印)は、クラブヘッドの運動方向(青矢印)に近い向きで、フェースの法線方向(赤矢印)にカーブする。」

というものです。図7に「誤った飛球法則」を示します。(図3と比較して下さい。)


図7 「誤った飛球法則」
図7 「誤った飛球法則」

「誤った飛球法則」を信じていると、スライスを改善するには、「今までより左方向にクラブを振る方が良い」との誤った判断を下してしまいます。


以下に、「誤った飛球法則」が現実とかけ離れているかを示します。


二次元での衝突(鉛直面)

アイアンでのゴルフボールの飛び方を鉛直面で考えてみます。

アイアンのインパクトでは、ヘッドの移動方向(青矢印)は、ほぼ水平(若干下向き)です。また、アイアンのフェースの法線方向(赤矢印)は、斜め上方を向きます。


図8は、正しい「ゴルフの衝突理論」に従った場合です。

図8 正しい「ゴルフの衝突理論」が示すアイアンのインパクト
図8 正しい「ゴルフの衝突理論」が示すアイアンのインパクト

図8に示した様に、正しい「ゴルフの衝突理論」では、ボールの初期飛び出し方向(黒点線矢印)は、フェースの法線方向(赤矢印)に近い斜め上向きです。その後、ボールの回転でクラブヘッドの運動方向(青矢印)の反対側(上方向)にカーブ(上昇)していきます。ボールの軌跡(黒矢印)は、現実のボールの飛び方と同じです。


図9は、「誤った飛球法則」に従った場合です。

図9 「誤った飛球法則」に従ったアイアンのインパクト
図9 「誤った飛球法則」に従ったアイアンのインパクト

「誤った飛球法則」に従うと、ボールの初期飛び出し方向(黒点線矢印)は、クラブヘッドの運動方向(青矢印)に近い向きになります。すなわち、アイアンで打ったボールは、地表すれすれを、ほぼ水平に低空飛行した後、スピンがかかってフェースの法線方向(赤矢印)側に急上昇する事になります。

「誤った飛球法則」は、明らかに現実とは異なるボールの動きを示します。

スライスを直すための三次元での「衝突理論」

二次元での正しい「衝突理論」の結果を 図3(水平面)と図8(鉛直面)に示しましたが、この章では三次元で考えます。


三次元での正しい「衝突理論」で、アイアンのスライスを図10に、ドライバーのスライスを図11はに示しました。各矢印は三次元の矢印で、矢印の終点を水平面に降ろした点と矢印両端をつないだ直角三角形も記してあります。


青矢印:「クラブヘッドの運動方向」

図ではアウトサイド・インで、目標より左向きです。アイアンの時は水平より少し下向きに、ドライバーの時は、水平より少し上向きになります。(ゴルフボールとの衝突は、アイアンではクラブヘッド軌道の最下点通過前、ドライバーでは最下点通過後です。)

赤矢印:「フェース面の向き」

インパクト時のクラブフェース面の法線方向で、アイアンは斜め上方を、ドライバーは水平より少し上向きになります。

黒点線矢印:「ボールの初期飛び出し方向」

三次元でも、初期飛び出し方向(黒点線矢印)は、青矢印赤矢印が作る平面上で、赤矢印に近い向きになります。

[青矢印黒点線矢印間の角度]:[黒点線矢印赤矢印間の角度]
   = [80~90]:[20~10]

黒矢印:「ボールの軌跡」

インパクト後に、ボールが飛んでいく軌跡を示します。ボールの回転によるカーブの向きは、青矢印赤矢印が作る平面上で、赤矢印側の向きになります。ボールは黒点線矢印の方向に飛び出し、黒矢印のように、右方向にカーブしつつ上昇していきます。


図10 三次元でのアイアンのスライス
図10 三次元でのアイアンのスライス

図11 三次元でのドライバーのスライス
図11 三次元でのドライバーのスライス

真っ直ぐ飛ばない原因と対策

上述した通り真っ直ぐ飛ばないのは、インパクト時にフェースの法線方向が目標方向と異なるためです。


インパクト時にフェースが左右を向く大元の原因は、手打ちスイングそのものです。

手打ちスイングとは、手と腕を能動的に複雑に制御して、クラブヘッドをボールに当てる、前時代のスイングです。真っ直ぐ飛び難く、飛距離が伸びず、ダフリ・トップ・シャンクが出やすく、クラブ毎にスイングが異なり、見た目も悪い等欠点だらけです。

スイングでクラブを最も上に振り上げた時に、周囲の人と普通に話せたら手打ちスイングです。


対策は、アメリカで標準の体打ちスイングに変えるしか道はありません。

 体打ちスイングは、以下の利点を持っています。

・スライスだけで無く、他のスイングミスを極端に減らす事が出来ます。

ダウンスイングを制御する必要が、体打ちはありません。そのため、プレッシャーがあっても、ドライバーやアイアンなどクラブの種類が変わっても、常に同じダウンスイングを実現出来るます。アプローチショットも格段に良くなります。

・ドライバーでのボールの飛距離が格段に伸び、スコアは当然良くなります。

正しい体打ちスイングでは、体幹の大きな筋肉を使うためです。


この体打ちスイングは、現在のアメリカのレッスンプロのほとんどが教えているものです。

一旦理解すると、アメリカのトッププロゴルファーは、この打ち方をしていることが一目で判り、あなたも同じ美しいスイングを手に入れられます。

衝突理論を実践

衝突理論を実践し、真っ直ぐやカーブの打ち分けが出来る体打ちスイングは、ゴルフ練習器具「ツアーアングル144」日本語字幕付きDVDで1時間もかからず理解できます。


そして、指に挟むだけのゴルフ練習器具「ツアーアングル144」は、あなたに正しい体打ちスイングの動きを教えてくれます。

ツアーアングル144は、手首への接触の有無で、正しいスイングか否かをリアルタイムに教えてくれるゴルフ練習器具です。取り外せば元に戻ってしまう矯正器とは、違います。


正しい体打ちスイングを手に入れれば、短期間でアベレージゴルファーを卒業し、本当の意味でゴルフを楽しむことが出来ます。

ゴルフスイング練習器具「ツアーアングル144」を使うと、ゴルフスイングの基本を容易に身につけられます。

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